なぜ人はこれほどに犬を愛してやまないのでしょうか?  
      犬の魅力とは何でしょうか。 
      それは、打算のない純粋な愛情ではないでしょうか。  
      犬が人を愛する時、地位や財産あるいは学歴や容姿などの一切に左右されません。  
      犬は人のそのものを愛し、犬は人の能力に従います。  
       
      それは、服従という言葉よりは、心服または信服といった言葉の方が適切でしょう。 
      そして、犬は無償の愛を私たちに与えてくれるのです。 
      あなたが犬に求めたものは、純粋な愛情であり、犬との心の絆だったのではないのでしょうか。  
      犬との関係作りに必要なものは愛情です。 
       
      それなのになぜ、犬との関係作りに「オヤツによる取引」を持ちこんでしまうのかがわかりません。  
      子供にお小遣いさえ与えておけば、親子の関係はそれでいいと思うのでしょうか?  
      早いから、簡単だから、楽だから、喜ぶからといって、無償の愛を、損得の取引に変えてしまってよいのですか?そんなものが、本当に「犬に優しいトレーニング」なのでしょうか? 
      それが優しさなのであれば、私は優しくなくてもかまわない、「真に愛情のあるトレーニング」を目指します。  
       
      たしかに、オヤツをあげれば寄ってもきます。でも、そんな程度なら裏山のタヌキとだって大差がありません。 
      そんなものはただの餌付けにすぎません。  
      そんなもので信頼関係ができたとは言いません、よく馴れたと言うのです。  
       
      あなたがクラブのホステスさんだとしましょう。 
      ソファーで札束をばらまくお客さんがいたら、そのお客さんに寄っていき、媚びの一つも売るでしょう。  
      しかしだからといって、あなたはそんなことで、そのお客さんを信頼しますか?  
      犬は、たしかに甘やかしてやれば、嬉しそうにじゃれて遊んでくれます。 
      しかしそんなことをしたから信頼関係ができたとは言いません、よく懐いたと言うのです。 
       
      犬という動物は、その本能で、もっと相手の本質を見抜きます。 
      犬は、信頼できない相手のいうことはききませんし、身を委ねることをしません。 
      それどころか、甘やかすことしかできない相手と思えば、なめてきますし、つけあがりもします。 
      決して犬がいやな奴なわけでも何でもなく、動物として当たり前のことなのです。  
       
      「寄らば、大樹の陰」という諺があります。 
      会社員だって政治家だって同じです。  
      力のある者に付くことで、わが身の安全を図るとともに、安心を得ることができるのです。   |