育成における不採算要因 
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      訓練者の育成において、もっとも大変なことは、飼養管理と技能指導であり、この二つは密接に関連します。  
      教材犬の調達が、人様の犬であれば責任を負いますし、自分の犬であれば終生の費用がかかります。  
      ・預託訓練および教材犬の廃止     
      技能の指導は、教材犬と個別的指導を要します。  
      ・知識の指導への転換         
       
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       ○個々の犬による違い 
        その犬の性格を見抜いて、それぞれの犬に適した方法で教えること 
        さまざまな性格の犬を訓練するという、それこそ実践で経験を重ねるより他にありません。  
      ○信頼関係の築き方 
        あらゆる犬と、一定の期間で、信頼関係を築くことのできる技能 
        ほめることや叱ることが、有益な効果を生むためには、相手との信頼関係が非常に重要です。 
        そのために、まず訓練を始める前に犬との信頼関係を築きます。 
        短期間で信頼関係を築けなければ、訓練そのものができる期間がその分減ってしまいます。 
       
      しかし飼い主であれば、自分の飼っている犬のことはよく分かっていて信頼関係もできているのですから、  
      飼い主が自ら自分の犬に教えるのであれば、まずそのこと自体が必要ではなくなります。  
      そこでトレーナーは、犬への教え方を飼い主に教えることで、犬への訓練自体は飼い主が行なうこととしました。 いわゆる、しつけ教室です。  
       
      すなわち、教える対象を、犬ではなく、人に転換しました。  
      それによりトレーナーとして学ぶ内容は、犬に教える技能ではなく、飼い主に教える理論であり、 
      必要とされるものは、さまざまな個性の犬に対応できる犬とのコミュニケーション能力ではなく、  
      さまざまな飼い主に対応できる人とのコミュニケーション能力となりました。  
      トレーナーの育成においても、犬を連れての実技主体ではなく、教室での集合授業が可能になりました。  | 
    
    
        
        
      ○罰の使用 
        罰は、薬と同様に弊害や副作用もありますので、その選択や使用にあたっては充分な勉強が不可欠です。    その指導は、やって見せさせてみてといった形態で、マンツーマンでなければ非常に教えにくいものです。                            
       
      訓練技術のうち、修得の難しい罰の使用については、動物愛護の観点からも「使用すべきでない」とすることで、 教える必要がなくなりました。  
      そもそも、動物行動学では、「する」という行動が対象であって、「しない」というのは対象外のことです。  
      「する」ようにというニュアンスの強い「訓練」も、「しない」ようにというニュアンスの強い「しつけ」も、  
      「トレーニング」という横文字を使うことによって、区別をされにくくなりました。  
      さらにオペラント条件付けにおいては、行動が減ること、つまりは、しなくなることを罰と定義していますから、 なおさらに、トレーニングする上で罰は無意味なものと思わせることができます。                            | 
    
    
        
        
      ○教材犬の調達 
        生体の飼養は施設と24時間365日の管理する人手が必要であるとともに、大きな責任とリスクを負います。   
      衛生管理(犬舎や施設の清掃)健康管理(病気や怪我)犬体管理(手入れや運動)行動管理(吠えや噛み等)  
       
      ○マンツーマンの指導  
        訓練士の育成は、技能の伝承や後継者の育成としてのものであり、育成自体の採算などは対象外でした。  
       
      しかしそれでも、トレーナーの卵である人たちに、どのようにして教えるのかという問題は残っています。    
      自分の犬と上手に信頼関係を結ぶことのできない飼い主には、信頼関係を結ぶ方法を教えなければなりません。  
      自分の犬の性格や、それに適した方法をわかっていない飼い主には、そこから教えなければならないからです。  
      そもそも教材犬がいなければ、飼い主に教えるべき「信頼関係を築く方法」そのものを学ぶことができません。  
       
      そこで、そうした問題点を解決するのが、「科学的トレーニング方法」の導入です。  
      科学的トレーニングであれば、そんなものは教わる必要もありませんし、教える必要もないのです。  
      見ることも確かめることもできない信頼関係などという抽象的な概念を、そもそも科学では扱いません。  
       
      関係性により左右されるものは科学ではありませんし、個の特性により左右されるものは科学ではありません。  
      同じ条件で行なえば、どの実験者が、どのネズミを使って実験をしても、同じ結果が出てこそ科学なのです。  
      つまりは科学的という名のもとに、非科学的なものを排除することで、訓練方法そのものを限定したのです。  
       
      このように、信頼関係、罰の使用、個々の特性といった、修得の困難なもの、個別指導を要するもの、教材犬を  
      要するものの一切を、不要のものとすることで、ドッグトレーニングビジネスは成り立つようになったのです。  
       
      「褒めることで犬をしつける」と言いつつも、褒めることは、その効果が相手との関係性に大きく左右されます。 
      それゆえに導入されたものが「おやつ」です。教育としての見地からは賛否の意見も分かれますが、 
      食欲や性欲といった犬の生存本能に直接に働きかける方法は、たしかに絶大な効果があります。  
       
      また、罰をいけないものとして使用を禁止してしまったために、犬に禁止を教えることができなくなりました。 
      そのために、犬にとって人間が与えるオヤツよりも魅力的なものの存在は、トレーニング上はとても不都合です。 それゆえに、ノーリードの禁止が徹底して述べられますし、避妊去勢手術が推奨されるといった側面もあります。 | 
    
    
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