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      預託訓練には、費用がかかる、淋しい、心配などのデメリットがあり、躊躇する人が多いと思います。  
      たしかに預託訓練には、非常に大きなデメリットがあります。  
      しかしそれは、犬や飼い主にとってではなく、犬に訓練を教える側にとってのことなのです。  
       
      随分と以前は、犬を訓練する場合には訓練所に預けることが一般的でした。  
      「訓練所に預けて訓練をすると、見えないところで虐待される。」「警察犬の訓練士は体罰を使って訓練する」  
      「犬は怖くていうことをきくのであって、飼い主の言うことはきかない。」などといった「訓練士バッシング」がインターネット上で、犬のしつけや飼い方、質問や相談のコーナーのあちらこちらに書き込まれました。  
       
      それらの多くは一般の飼い主の方の体験や見聞きしたものなのでしょうが、一部には当時設立されたばかりのトレーナー養成団体の市場開拓の商売戦略として、組織的に風評の流布が行なわれていた事例もあります。  
      トレーナー養成事業者たちは、新規参入にあたり、まず既存の犬の訓練方式を全否定することから始まりました。  
      キーワードは「科学的」と「動物愛護」です。職人的技能は非科学的、罰は虐待とされたのです。  
       
      確かに、指摘の多くは十分に賛同できる内容であります。  
      いわゆる訓練士業界が、いまだに封建制度の残る社会であり、それらの問題点については私自身も身を持って認識しています。 
      ただし、どのような業界においても悪質な輩というのは排除しきれないのです。  
      ネット上に書き込まれたものの多くは、おそらく実例なのだろうとは思いますが、非常に極端な例をあげて、それを理由に全てを否定することは適切ではありません。
       
       
      経営のできる人や、ちょっと頭の良い人ならばすぐにわかることですが、預託訓練にはデメリットが多すぎます。 
       ・施設を必要とする(多額の初期投資と維持管理の経費が必要です。)  
       ・管理の人手を必要とする(生き物ですから急病などもあり、24時間、365日の管理が必要です。)  
       ・管理の技能を必要とする (怪我、病気の健康管理、脱走、不慮の事故の防止などの行動管理が重要です。)  
       ・成果について全責任を背負う (しつけ教室であれば、成果の良否は飼い主の責任です。)  
       ・問題行動の問題をそのまま自分が抱え込む (吠え、咬みつき、破壊、排泄、他犬との喧嘩など)  
       ・上記全てに伴う、評判によるリスクを負う(犬の悲鳴がするから虐待しているに違いない、など)  
       
      吠えて困っている犬や、飼い主にさえも咬み付く犬を預かることがどういうことか考えてみてください。  
      吠える犬の預かり訓練を引き受けるのであれば、当然に住宅街に住むことは難しくなります。  
      もちろんそれを直すのが仕事ですが、直った頃にはお返ししますから、預かり間、犬はずっと吠えているのです。  
       
      その立場に立たない人は、すなわち、犬を預かっての訓練をしない人は、何とでも言えます。  
      「犬がよく吠えている」「狭い犬舎に入れている」「臭いがすごい」  
      もちろんどれも預託施設として決して良いことではありませんから、十分に考慮し対応するべきです。 
      でもまるで評論家のような物言いをしているのを聞くと、つい訓練所の味方をしたくなってしまいます。  
      長時間クレートに入れておくことについての是非もありましょうし、それ以外の管理方法についても、それぞれに一長一短があるのです。何頭もの犬を一緒に自由にしておくことにも、いろいろの是非があります。  
       
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