この20年ほどの間に、犬のしつけ方法は大きく変わってきました。              本来、教育であったはずの犬のしつけが、ビジネスとして行なわれるようになったことにより、              採算の合わない方法や、リスクを伴う方法は、もっともな理由をつけて排除されていきました。                     叱ることはいけないこととされ、させることは強制であるとし、褒めると称しておやつを与える。  そんな方法が、科学的で動物愛護に則った正しい方法であるかのように広められています。  
       かつては住み込みで長い年月を、それこそ犬と寝食を共にして修得した犬の訓練技能ですが、              昨今では、専門学校に通ったり協会のセミナーを受講して資格を取得する人が圧倒的多数です。  トレーナー自身が、「教える側(学校や協会)にとっての都合の良い訓練方法」を教え込まれているのです。  
                   科学的トレーニングとは、非科学的である「信頼関係」という抽象的な概念を排除したトレーニング方法です。              信頼関係を排除した方法を取り入れることで、トレーナーになるための勉強は、犬に教えるための実技ではなく、 飼い主に教えるための理論が主体となり、犬を伴わずの教室での授業形式で行なうことが可能になったのです。              正の強化に着目することで、技能の修得がもっとも困難な罰さえも、そもそも教える必要がなくなりました。              全ての動物に共通する行動原理ですから、それぞれの犬の性格を知って、その個性にあわせる必要もありません。 しかし選ぶべきは、「犬にとっての良い方法」あるいは「飼い主にとっての良い方法」ではないのでしょうか。                            
       たしかに信頼関係に基づく訓練方法は、相手との関係性に左右されますし、容易な方法ではないかもしれません。 犬との関係作りを習うことも、あなたがプロになるためでしたら、あらゆる犬と信頼関係を結べるだけの多様な                            能力を身に付けなければなりませんが、飼い主であれば、一緒に暮らして常に世話をしている自分の愛犬とだけ、信頼関係を結ぶことができればいいのですから、それほど大変なことではありません。                            なによりも、犬と信頼関係で結ばれることこそが、あなたが犬に求めている本質なのではないのでしょうか。 
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