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      対症療法と原因療法 
       
      問題行動の矯正には、対症療法と原因療法があります。  
      対症療法とは現れた症状に対して働きかける方法であり、 原因療法は症状が現れる原因に対して働きかける方法です。 
      例えば、咳止め、解熱剤の処方などが対症療法で、病原菌に作用する抗生物質の投与などが原因療法です。  
          お分かりのように対症療法というのは、当面の解決策であって本質的な治療ではないようにも思われます。  
      対症療法を用いてその行動だけを変容させても、原因をそのままにしていたのでは別の新たな問題行動が起こることもあります。 
      しかし、いろいろな意味で余裕があれば理想的な方法を選ぶことができますが、 現実に問題が逼迫している場合には、 
      即効性のある方法を優先する必要があるでしょう。 
      また状況いかんでは、危険や弊害のある方法であっても効果を優先しなければならない場合もあります。 
      ただしその場合には予めリスクなどについて、明確に認識しておく必要があります。  
           
          さきほど述べた原因療法と対症療法についても、両方を同時に進めていくことが現実的です。  
      すぐに成果のでる方法を行なう時には問題になりませんが、原因療法の場合に成果がでるまでに長い期間を要する方法もあります。 
      成果の無いままにどの程度の期間を続けていていいのかがわからなければ、不安になり成果を目前に中断してしまう人もいます。 
      もちろん計画通りに順調に進むことの方が珍しいとも言えますが、一つの予見を示しておくことは実施者のためにも重要なことです。 
      どのような兆しが見えたら順調で、どのような兆しが見えたら治療を中止すべきなのかを伝えておいたほうがよいでしょう。  
      とくに「無視」や「タイムアウト」を推奨するトレーニングにおいては、実際に行なう場合にどのくらいの時間経過や、 
      どういったタイミングで、さらには、どのような対応でそれらを解除するのかをあらかじめきちんと明らかにしておくべきです。  
           
          治療に際しては、全てが右肩上がりに改善していくのではないことを必ず知っておかなければいけません。  
      行動心理学用語でいうバーストのように、治療を始めると一時的に(消去抵抗が行われる初期段階に)その行動が強まる、すなわち悪化して見えることも多くあります。経験の無い人は、この時点で中止してしまい結果として直すことができません。 
      ただし、バーストではなく選択した方法が不適切で本格的に悪化している場合もありますので、その見極めは非常に重要です。  
           
          実際には、様々な手法を選択し複合的に行なうことが一般的です。 
      なぜなら、各々の方法には一長一短がありますし、選択する方法によって生じる弊害や副作用に対しての対応も必要になるからです。 
      野球選手が打撃フォームの改造に臨めば、一時的に全てが悪くなることは明白でしょう。 
      ピッチャーがコントロールを身につけようと思えば、一時的に球速は落ちるでしょう。 
      何もかもを維持しながら特定の何かを伸ばしたいというのは虫のいい話です。  
       
      まずは何を優先するのかを明確にした上でそれを伸ばして、それがある程度のレベルまで身に付いてから他を回復させるといった方法の方が普通だと思います。 
      先に述べたバーストは直したい行動そのものについてですが、弊害としてそれ以外の行動が問題として表れることもあります。 
      経験を積んでいれば当然に予想される弊害もあれば、その犬にのみ見られる弊害もあります。  
       
      一般的に効果の高い方法ほど弊害や副作用も多いものです。 
      特に即効的な効果のある罰は、その弊害や副作用も即効的に顕著に表れますので、使用するには専門家の指導を受けるべきです。 
      極度に臆病な犬に強い罰を用いると、失禁や脱糞あるいは肛門腺の噴出などをすることもあります。 
       
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