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       「散歩は毎日行くのですか?」と尋ねると「散歩は毎日行かなくても良いのですか?」と逆に聞かれます。  
      またよく、「どれくらい散歩をさせてあげれば良いのでしょうか」と言う質問を受けます。  
      ものの本には、「毎日、欠かさず散歩に連れて行かなければ」とか、  
      「この犬種は、朝夕40分位引き運動をさせなければならない。」などと、まことしやかに書かれています。  
       
      最も問題となるのは、これを真に受けて初めの数ヵ月か数年の間はそうして、それが続かない場合です。  
      だれしも犬を飼い始めた当初は、可愛らしさやもの嬉しさもあって、一生懸命に散歩に連れて行くのです。  
      ところが成長に連れて犬の力は強くなり、散歩がだんだん大変な仕事になってしまうのです。  
      この頃にはすでに、お子さんやご主人は一抜け二抜けして、犬の散歩は主婦の仕事になっています。  
      犬の大きさや性格によっては女性の力では手に負えず、次第に誰にも連れて行って貰えなくなるのです。  
       
      ここまで来れば、悪循環も終点の間近です。 
      たまの日曜日、ご主人が散歩に連れ出そうとしたら犬にとっては久し振りの散歩で、 
      一層興奮してご主人までをも引きずりまわす始末。  
      いつしか犬は、庭の隅に繋がれたままで一日中吠えている。これこそ典型的な保健所行きの事例です。  
       
      そもそも皆さんは、何のために犬の散歩に行くのでしょうか。  
      排便排尿のため、犬の運動のため、飼い主の健康のため、などなど色々あろうかと思います。  
      私の意見としては、散歩は飼い主と犬とのコミュニケーションの時間であり、日光浴や、社会馴致、  
      あるいは気分転換であったりするべきだと考えます。 
      ほとんどの人は犬の運動のために行かれているのでしょうし、それは一つの大切な目的ですが、 
      必要運動量をむやみに増やすような育て方には賛成できません。  
      たしかに運動不足はストレスや体調不良の原因となりますが、きちんとしたしつけもせずに、 
      犬を疲れさせることを目的として、それによって問題行動を起こさせないようにしようとすると、  
      より以上の運動を必要とするようになります。 
      むしろ運動を考えるなら、量より質を考えるべきでしょう。  
       
      私がいつも言うのは、何とも無責任な表現ですが、なるべくいい加減にお飼い下さいという事です。   
      犬は人間の子供と違って、友達から話を聞いて、それをうらやむという事はありません。  
      自分の置かれた世界が全ての世界なのです。  
      散歩に行かない日があるかと思えば、長時間歩く日もあるし、すぐに帰る時もある。  
      初めから、そういった生活をしていれば、犬もそういうものだと思って育つのです。  
       
      もちろん、だからと言って初めから劣悪な環境に置くことを推奨しているのではありませんし、 
      間違えても運動をさせる必要がないといっているのでもありません。 
      当り前の話しですが、なるべくきちんと運動をさせてあげるにこしたことはありませんし、 
      規則的な生活が理想である事に異論を挟むつもりはありません。  しかしもし途中で続かなくなるくらいなら、習慣にさせない方が良いのです。               犬の寿命を15年と考えて、その間それほど規則的な生活を送れる人がどれほどいるというのでしょうか。 また義務感で散歩に行くから、最も肝心な「犬との コミュニケーション」が、図れなくなるのです。               難しく考えないで、飼い主も犬もが、楽しんで行ける時間と距離で良いのです。  
       
      腰に古タイヤを付けたスポーツ根性漫画の主人公のように、飼い主を引きずり回しているあの様子は、 どう見ても鍛練であって、散歩ではないように思えるのは私だけでしょうか。  もちろん犬にとって散歩は最高の楽しみの一つですが、逆に見れば、食事と散歩しか楽しみが無いようなら、 
      飼い方そのもの、つまり犬と飼い主の関係に問題があると言えます。 
       
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