300科学的トレーニング
 


307行動の原理
行動の原理
説明するとややこしいですが、要は、動物はみんな快を求め不快を避けるという、実にわかりきったことです。
しかし、この定理は犬に何かを教える上で、もっとも大切な行動原理ですので、きちんとご理解ください。
行動分析学の基本的な原理は、レスポンデント条件づけ(古典的条件づけまたはパブロフ型条件づけ)と
オペラント条件づけ(道具的条件づけ)の二つにあります。

レスポンデント条件づけとは、「本来は反応と無関係な刺激(中性刺激)を与えた直後に、
生体が本来持っている反応(無条件反応)を引き起こす刺激(無条件刺激)を与えることを繰り返すと、
中性刺激のみで無条件反応が起こるようになる。」ことです。
パブロフの研究によるもので、犬にベルの音(中性刺激)を聞かせてから餌を与えることを繰り返すと、
ベルの音を聞かせただけで、犬は唾液を分泌するようになるというものです。

オペラント条件付けとは、「オペラント(自発的)行動が自発された直後の環境の変化に応じて、
その後の自発頻度が変化する学習」をいいます。
もう少しわかりやすく述べれば、「自分が何かの行動をしたとき、良いことが起きれば繰り返しするようになり、嫌なことが起きれば次第にしなくなる。」ということで、学術用語としては知らなくても、誰もが経験則として、子どものしつけや、動物の訓練などに古くから用いられてきたものです。

私たち人間や動物が自発する、広範な行動の全てが条件づけの対象であり、日常生活の中のいたるところで、
偶発的に生じているもので、行動分析学の祖である科学者スキナーによって定式化されました。レバーを押すと
餌が出てくる装置のついたスキナーボックスと呼ばれる箱の中にネズミを入れて行なわれたものです。

行動の原理  :
いいことが起きればその行動が増え、嫌なことが起きればその行動が減ります。
・ボタンを押したらオヤツが出てくる仕掛けでは、ボタンを押す行動が増えます。
・ボタンを押すと電気ショックが流れる仕掛けでは、ボタンを押す行動が減ります。
いいことには「好きなことが出現する」と、「嫌いなことが消失する」があります。
嫌なことには「嫌いなことが出現する」と、「好きなことが消失する」があります。

オペラント条件づけにおける定説 :
有機体(ヒトを含む全ての動物)の行動とその領域に含まれるもので、自発できる随意反応であれば、
強化と漸次的接近法を用いて、どのような反応でも条件づけることが可能である。

オペラント用語解説 
ここで、簡単に用語の説明をしておきます。 「オペラント行動」とは、その行動が生じた直後の環境の変化、
すなわち、刺激の出現や消失に応じて、その後にその行動が生じる頻度が増減する行動をいいます。
実際には、レスポンデント反応以外の全ての行動であり、行動とは死人にできない全てのこととされます。
行動の自発頻度が増えることを「強化」といい、逆に、減ることを「罰」(弱化)といいます。
出現によりオペラント行動の自発頻度を高めた刺激を「好子」(強化子・快刺激)と呼び、
その逆に、出現により自発頻度を低めた刺激を「嫌子」(罰子・嫌悪刺激)と呼びます。

オペラント行動の自発頻度の変化とそれが自発された直後の環境の変化との関係を 「行動随伴性」といい、
その行動随伴性には次の4種類があります。
・好子出現(快刺激の呈示) により行動の生起頻度が増加する(正の強化・陽性強化)
・嫌子消失(不快刺激の除去)により行動の生起頻度が増加する(負の強化・陰性強化)
・嫌子出現(不快刺激の呈示)により行動の生起頻度が減少する(正の弱化・陽性罰)
・好子消失(快刺激の除去) により行動の生起頻度が減少する(負の弱化・陰性罰)   
    ※ 強化も罰も、その後の反応変化(行動の増減)をもとに定義されます。   
    ※ 好子なのか嫌子なのかは、個体により、状況により、刺激の量により異なります。
・消去 : 好子出現・嫌子消失の中止により、行動の生起頻度が以前に戻ること。

行動の直前の刺激を「先行刺激」といい、ある先行刺激が特定の行動を出現しやすくするとき、
この先行刺激を「弁別刺激」といいます。 先行刺激によって行動の出現が統制するようになることを
「刺激統制」といいます。 これは、ある先行刺激が出現しているときの行動は強化し、出現していないときの行動は消去することにより、先行刺激が出現しているときにだけ行動が生じるようにすることです。

本能的逸脱:学習や条件づけが進行し、ある水準を越えると、動物が条件づけにより形成された行動ではなく、
       その動物の本来自然な行動をとること。 生体が生来準備されていることと違うことをさせても、
        条件づけは成立しません。

SSDR(種に固有な防御反応):動物には生命の危険に関わる苦痛や恐怖的な状況における防御反応が
               生まれつき備わっている。
3F [ Fleeing=逃走/Fighting=闘争/Freezing=凍結 ]
プロンプト : 適切な行動を出現させるために使用する外的な援助(手掛り・手助け) 
刺激プロンプト : きっかけを起こさせるための援助
反応プロンプト : 行動を進行させるための援助
フェイドアウト :プロンプトを徐々に取り除いていくこと。
分化強化 :反応にある基準を設けて、それを満たすもののみを強化する
漸次的接近法:一連の複雑な標的行動を、行動要素に分け順に形成する方法
課題分析  : 教えようとする新しい行動をより細かな段階に分けること
先行刺激  :行動の直前に起きる刺激
弁別刺激  :特定の行動を出現させやすくする先行刺激
刺激統制  :ある先行刺激が出現しているときには行動が強化され、出現していないときの行動は消去されることにより、       先行刺激が出現しているときだけ行動が生じるようにすること
チェイニング : 新しく教える行動を課題分析し、各段階を連続して行うこと (連鎖化)    
         総課題提示法・順向性チェイニング・逆向性チェイニング
シェイピング(反応形成): 出来る行動のうち最も標的行動に近いものを強化し、後にそれを消去することによる
              消去バーストを契機プロンプトとして利用し、分化強化を図る手法。




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